人事代謝有り。往来古今を成す。
-孟浩然-
【意味】
人の世は変わり続けている。人が来ては去ることによって時代が流れていく。
【注釈】
・孟浩然(六八九~七四〇)…中国盛唐時代の詩人。
・人事…人の営み。人間の世界。
【解説】
地元の古い街並みの写真を見ると、今の街並みとの違いに驚かされる。変わってしまった古い景色は、特別な思い入れがなければ忘れてしまう。変わりゆくのはこの世の定めだが、わかっていても寂しいものだ。そんな中で所々に昔のまま残っている景色を見つけると無性に嬉しくなる。
仏教の根本となる教えの一つに「諸行無常」がある。この世界のあらゆるものは変化をし続けており、一つの姿に留まることはない。その真理を体得していないから、物事が変わりゆくことを受け入れられない。それが苦しみの原因となる。
それを知ったとしても、私達は大切なものは変わらずにいて欲しいと思う。人間として自然な心だ。その気持ちを無理に無くそうとすることは、また別の苦しみを生む。
大切なものを今のままの姿で守りたいという思いを持ち、その為に最善を尽くす。それでもいつか変わりゆく時が来たらそれを快く受け入れる。自分の心に存在している相反する気持ちを両立することが、諸行無常を体得することである。それができたなら悟りへと近づくことになるだろう。