今月のことば  平成28年10月

水至って清ければ即ち魚無し

『漢書』

 

【意味】

 清らか過ぎる水の中には、魚はいない。

 

【注釈】

・漢書…中国前漢時代(紀元前二〇六~八)について記された歴史書。

 

【解説】

 透き通った海は絶景としてよく紹介される。とても美しい景色だが、そのような海の水は、水中を漂う生物であるプランクトンが生息できない水質であることが多い。プランクトンがいないので、それを餌とする魚も生息できない。プランクトンや魚がいないので水は透き通っている。人間の目には美しく見える絶景は、水中の生き物にとっては過酷な環境である。プランクトンがたくさんいる海は、人間の目には濁って見えるが、魚にとっては餌が豊富な海である。

 表面的な美しさや極端な清らかさには中身が伴わないこともある。見た目の美しさも目の保養として悪くはないが、その美しさがいかに生まれたかにも目を向けなければならない。

浄土は仏様の造った清らかな世界だ。経典には浄土の美しさを記す描写も多いが、それは表面だけのものではない。全ての人を分け隔てなく導こうとする仏様の慈悲の心によって生み出された美しさである。

 

清らかで美しい浄土の光景は、間違いなく私達を悟りへと導いてくれる。上辺だけではない本当の喜びを得ることができる。そう信じて浄土の光景を思い浮かべ、日々念仏に励んで欲しい。