諸の悪を作すこと莫かれ
衆の善を奉行せよ
『七仏通誡偈』
【解説】
お釈迦様はこの世界に現れた七人目の仏様と言われている。その七人の仏様が共通して説いた教えが「七仏通誡偈」である。この言葉はその一節であり、「あらゆる悪いことをするな。あらゆる正しいことをしろ」という意味である。
ごく当たり前の話だが、その当たり前のことができないのが人間の弱さである。その弱さとどう向き合っていけばよいか。
悪いことをしない方法の一つは、悪いことをできない状況に身を置くことだ。出家して一人になれば悪いことをする相手はいないし、修行に専念すれば悪いことをする暇はない。しかし、そうした状況に身を置き続けることは難しい。
そこで法然上人が説くのが、阿弥陀様の導きによる浄土往生である。『阿弥陀経』には、浄土は悪がない世界だと記されている。悪がないから浄土に行けば必ず仏になれる。そして念仏を唱えれば必ず浄土に行けるから、何も心配することはないという教えである。だが、この教えを「この世界で何をしても問題は無い」と捉える人もいた。
法然上人は私達が目指すべき生き方として「どんなに罪深い人も浄土に往生できると信じて、わずかな罪も犯さないようにしなさい」と説いている。誰もが仏となれる世界を築いてくれたことが阿弥陀様の慈悲である。少しでも悪をなさないようにすることがその慈悲に応えることであり、私達にとっての正しい生き方である。