大方の世捨て人には心せよ
衣は着ても狐なりけり
-大綱宗彦-
【意味】
大多数の僧侶には用心しなさい。法衣を着ていても、中身は人を騙す狐のようである。
【注釈】
・大綱宗彦(一七七二~一八六〇)…臨済宗大徳寺派の大本山である大徳寺の四百三十五世住職。
【解説】
世の中には制服を着る職業、定番の衣装を持つ職業がある。僧侶もその一つである。法務のために外出する際は黒い衣を着る。街中で黒い衣を着て歩いている人を見たら、その人のことを僧侶だと思うだろう。
そういう物の見方や考え方を戒め、人を身なりで判断せずに内面を見なければならないと警告する言葉である。
逆に言えば、衣を着る側も見なりだけでなく、自分自身の内面を正さなければならないということだ。見た目だけを取り繕っても、それはいつか見破られてしまう。
しかし、衣装を整えることで気持ちが引き締まるのも事実である。また、自分の身だしなみに気を配らなくなるのは、精神的に不安定になって自分を大切にできなくなっていることの表れだという。
仏様は必要最低限の衣装だけを身にまとっている。着飾るのでも全てを捨てるのでもなく、本当に必要なものを考えて選んだ結果が、仏像などに見る仏様の姿である。
外面も内面も自分である。どちらか片方だけが大事なのではない。あらゆる面から自分について考えることで、自分のあるべき姿が見えてくる。それが悟りを開くということである。