今月のことば  令和5年 3月

ホントよりも、ウソの方が人間的真実である、というのが私の人生観である。

なぜなら、ホントは人間なしでも存在するが、

ウソは人間なしでは、決して存在しないからである。

 

寺山修司『さかさま世界史 英雄伝』

 

 

【解説】

 初期の仏教経典と言われる『スッタニパータ』や『ウダーナヴァルガ』では、お釈迦様が悟った真理が端的に箇条書きで記されている。それに対し、浄土宗の教えの根本となる『阿弥陀経』や『無量寿経』や『観無量寿経』は、悟りや真理そのものよりも阿弥陀様や極楽浄土の素晴らしさを讃えることに重点が置かれ、お釈迦様が教えを説く様子が物語のように描写されている。

 

 お釈迦様は悟りを開いた後、かつての修行仲間に自分が悟った真理を説いたが、その内容が充分に理解されることはなかった。教えをそのまま言うだけでは相手に伝わりづらい時もある。そんな時に伝わりやすくする為に用いるたとえ話などを方便という。私達が悟りを開いて真理を体得する手助けとして、仏様が用意してくれたのが方便である。

 

 

 真理をそのまま伝えることで悟れる人もいるが、多くの人にとってそれは難しい。だから浄土宗の経典のように、方便を説く経典が必要となる。その内容は仏教の本質からかけ離れた超常的な作り話にも見える。しかし、そこに描かれる阿弥陀様の心や極楽浄土の景色は、私達が目指すべき理想である。それを読み取り、悟りに繋がるより良い生き方に目覚めて欲しい。