今月のことば  令和5年12月

去年(こぞ)今年(ことし)貫く棒の如きもの

-高浜虚子-

 

【解説】

 年が変わることは、去年がどこかへ消えて無くなり、その代わりにどこからともなく今年が現れることではない。去年の続きとして今年があり、今年の続きとして来年がある。年と年の間に新たな繋がりが生まれる。それが年が変わることだ。

 

去年があって今年があるのは人間にとっても同じだ。新年の挨拶として「新しい気持ちで」という言葉をよく聞く。新しい気持ちとは、去年までの自分に新しい何かを加えたものである。それまでの自分があるからこそ新しい自分もある。

 

 仏教に三世因果という教えがある。過去、現在、未来の三世は因果関係で一つに繋がっているという教えである。過去の積み重ねの上に現在があり、現在の上に新しい出来事が積み重なって未来となる。

 

 どれほど世の中が変わろうと、今まであったことがなかったことにはならない。私達の目には見えなくなった過去も、現在の私達の足元に必ず埋まっている。その上に私達は立っている。そしての現在の私達も、未来の土台として残り続ける。ほんの僅かな一部分かもしれないが、三世を繋ぐためには誰一人欠かすことはできない。自分がかけがえのない存在であることを誇りに思って生きて欲しい。