今月のことば  令和4年 8月

咲いたら花だった 吹いたら風だった それでいいでないか

-高橋元吉-

 

【注釈】

・高橋元吉(一八九三~一九六五)……詩人。群馬県前橋市で書店を経営しながら詩作に励む。

 

【解説】

 人間には誰もが他の人と違うその人だけの個性がある。だから自分の個性を出せ、自分らしくあれと言う。では他の人と違う自分らしさとは何だろうか。人間にはそれぞれ生まれ持った特別な何かがあるのだろうか。

 

 仏教に「無我」という教えがある。どんなものにも絶対的な本質は存在しないという教えだ。全てのものは他から様々な影響を受けてその姿を変えていく。それは人間も同じである。生まれ育った環境、出会った人、経験した出来事、様々なことに影響されて一人の人間として形成されていく。その過程で生まれるのが、他の人とは違う自分らしさである。人間の個性は生まれ持ったもので決まるのではなく、人生で得られるもの全てによって決まるのだ。

 

 

 人は誰もがその人だけの特別な人生を生きている。日々の生活の積み重ねた今の自分の姿こそが、私達の個性なのだ。他の人と違うことをせずとも、特別な何かになろうとせずとも、私達はただ生きているだけで他の誰とも違うかけがえのない存在となる。