今月のことば  令和4年 3月

先を争うの経路は(せま)し。退き(おく)るること一歩なれば自ら一歩を寛平にす。

『菜根譚』

 

【意味】

 先を争うと狭い道はますます狭くなる。一歩を譲ることによって、自然と道は広くなる

 

【注釈】

・菜根譚…中国明代(一三六八~一六四四)の末期に洪自誠が記したとされる訓話集。洪自誠という人物の詳細は不明。

 

【解説】

 自動車で走行していると、狭い道路で対向車とうまくすれ違えず苦労することがある。どちらがどう動けばいいのか。それぞれの場面に応じて色々な決まりがあるが、今回はどれが当てはまるのか、その見極めはなかなか難しい。相手のことを考えず無理矢理突き進むのは論外だが、時には自分が先に行った方が相手にとって走りやすくなることもある。それなのに自分が動かず相手に先に行ってもらおうとしても、かえって迷惑になる。

 

 譲り合いの精神が大切だと言うが、「お先にどうぞ」と言うだけでは何にもならないこともある。どうすれば相手の為になるのか。それをお互いに考えることが、本当の譲り合いの精神である。

 

 阿弥陀様には観音と勢至という二尊の菩薩が付き従っている。観音様は慈悲を、勢至様は智恵を司る菩薩である。人を思いやる慈悲と、その思いを実現するための智恵。この二つを授かり皆で分かち合うことで、私達は浄土への道を一緒に進んで行けるようになる。