道は邇きに在り 而るに諸を遠きに求む
『孟子』
【意味】
正しい方法は私達の身近にある。しかし、それを遠くにあるものだと考えてしまう。
【解説】
法然上人が生きた時代には、浄土へ行くには出家して修行をするか、寺や仏像を建立することを功徳として積むことが必要とされていた。しかし、それができるのは特別な地位にある人だけであり、多くの人は浄土に行けないとされていた。
それに対して法然上人は、特別なことをして浄土に行こうとするのではなく、私達の生活の全てをより良い念仏を唱えるための準備と考え、今のままの暮らしの中で阿弥陀様のことを思って念仏を唱えればよいと説いている。念仏第一の生活を続けることこそが、浄土に行く道なのだ。
「普段通りのことよりも特別なこと、易しいことよりも難しいことをする方がより成果がある」と私達は思いがちである。しかし、今の自分にとっては遥か遠くに思える目標だとしても、そこまで辿り着くための出発点は今日の暮らしの中にある。日々の生活の中で普通のことを正しくやり続けること、それこそが最善の道である。