今月のことば  令和2年 6月

燕が一羽来ても夏にはならない

‐英語のことわざ‐

 

【原文】

One swallow does not make a summer

 

【解説】

 この言葉は早合点してはいけないという意味のことわざである。大元はアリストテレスの言葉と言われており、そちらでは幸福は一朝一夕でなるものではないことのたとえとして用いられている。つまり、一つの出来事だけで全てがわかったり決まったりはしないということである。

 様々な出来事が結びついて私達の人生となり、この世界となる。しかし、私達が目にできるのはその中のほんの一部分でしかない。人間には理解できない複雑な結びつきでこの世界は成り立っている。

仏様には神通力という世界の全てを見通す力があり、それによって物事を正しく判断できるが、悟りを開いていない人間にはそれができない。まずはそれを自覚しなければならない。

目の前の出来事がどんな未来を引き起こすのか。どれだけ予測しても、その時が来るまで知ることはできない。不安であるが、だからこそ希望もある。悪い状況も自分では気づけなかった些細なきっかけで好転するかもしれない。

広い視野を持ち、目先のことだけに囚われず、「わからない」ということを受け入れる。その上でできる限りのことを考え、少しでもいい結果が出るように最善を尽くす。そういう生き方を心がけることが、悟りを開き、仏様に近づくことに繋がっていく。