泰山は土壌を譲らず 故に能く其の大を成す
『史記』
【意味】
泰山はわずかな土くれでも受け入れる。だからあれほど大きな山となった。
【注釈】
・泰山…中国山東省にある山。皇帝が即位したことを天地に知らせる儀式が行われていた。
・史記…中国の歴史家、司馬遷(紀元前135頃~紀元前85年頃)による歴史書。
【解説】
度量の大きな人物は、どんな些細な意見にも耳を傾ける。それによって大事業を成し遂げるということを表す言葉である。
仏教は約二千五百年前にお釈迦様から始まる。各地に広がり時代を経る中で、お釈迦様の言葉を伝える経典を元に様々な形へと派生していく。それぞれの人にとって最善の教えを授けるためである。その過程で生まれたのが「偽経」である。偽経とはお釈迦様が説いたという体裁で、後の時代の人が創作した経典である。
偽経はお釈迦様の言葉ではない。しかし、そこに記された教えに救われた人もいる。ならばそれも仏様の教えを伝える経典だ。偽経をまがい物として闇雲に排除するのではなく、きちんと目を向けて必要ならば受け入れる。その大らかさこそが仏様の心である。
この世界の一人一人にふさわしい教えがある。時代が変わり、この世に新しい命が生まれれば、その一人の為の新しい教えが生まれる。その全てを受け入れて、仏教はどこまでも大きくなっていく。その大きな導きの下で、私達は誰もが仏となれる。