今月のことば  令和元年11月

我々はしたいことの出来るものではない。

只出来ることをするものである。

芥川龍之介『侏儒の言葉』

 

【解説】

 人間がどれだけ努力をしても自力で空を飛ぶことはできない。人間の体は空を飛べる造りにはなっていないからだ。それでも人間は空を飛ぶことを諦めず、自力で飛ぶ以外の様々な方法を探した。それが文明の発展に繋がっていったのだ。

 何かを成し遂げるには、自分自身のことや取り組もうとしていることについてよく知り、できることとできないことを見極めなければならない。それを考えることも大切な努力の一つだ。

 浄土宗の教えの元となる経典の一つ「観無量寿経」には、浄土へ行くための様々な修行法が示されている。その修行が実践できない人のために、最後の手段として示されるのが念仏である。確かに南無阿弥陀仏と唱えること自体は簡単である。しかし、決して安易な方法ではない。念仏しかできない自分の弱さや未熟さを受け入れることは、厳しい修行に打ち込むよりも難しいかもしれない。

 自分を客観的に見つめ直して念仏しかできない自分を知る。誰もが仏となれる道を開いて下さった阿弥陀様の思いを知る。そうすれば念仏という簡単な方法の本当のありがたみが分かり、心の底から南無阿弥陀仏という言葉が溢れ出るだろう。