今月のことば  令和6年 5月

なにごとの おはしますをば 知らねども

かたじけなさに 涙こぼるる

-西行法師-

 

 

【意味】

 どなた様がいらっしゃるかはわかりませんが、恐れ多さに涙がこぼれます。

 

 

【解説】

 西行法師が伊勢神宮を参拝した時に詠んだといわれる歌である。

 

 日本は八百万(やおよろず)の神の国といわれる。神様はこの世界のあらゆる場所に存在している、どんなものであってもそれを司る神様がいるという考え方だ。

 

 この世界は人間の力や考えが及ばぬことばかりである。自然を司る神様達がもたらす恵みも災いも、私達の思い通りにはならない。それでも自然と共に生き、神様を敬ってきた。神様は目に見える形では現れなくとも、いつもどこにでもいるごく身近な存在なのだ。

 

 『阿弥陀経』に「ガンジス川の砂の数ほどの仏達」という言葉がある。ガンジス川の砂の数とは、数えきれないほど多いことのたとえだ。つまり、仏様は数え切れないほどたくさんいらっしゃるということだ。

 

 仏教は悟りを開いて仏となるための教えである。仏教を実践すれば仏となることができる。だから仏教を信じた人の数だけ仏様がいらっしゃる。私達もいずれ仏となってその中に加わることを目指している。

 

 

 無数の仏様がいて、無数の教えを説いている。だから私達が仏となるための道も無数にある。その道はごく身近なところから始まっている。日々の生活の中で仏様の導きを感じ取り、よりよい生き方を実践してほしい。