今月のことば  令和6年10月

人間はどこまでも自己を標準として他に及ぼすものか。

正岡子規「病牀(びょうしょう)六尺(ろくしゃく)

 

 

【解説】

 地球は宇宙の中心で静止し、太陽が地球の周りを回っている。かつてはこの天動説が信じられていた。実際にはこの考え方は間違いであり、地球が太陽の周りを回っているという地動説が正しことが判明する。

 

 しかし、今でも私達は太陽を見て「日が昇る」「日が沈む」と言う。天動説ではなく地動説が正しいと知りながらも、地球ではなく太陽の方が動いているという感覚を持ち続けている。

 

 仏教では人間の苦しみの根本的な原因は、真理を知らないことであると説く。しかし、知識として真理を知ったとしても、それを体得して実践できるとは限らない。私達が気付かない内に身に付けてしまった間違いを正すことはとても難しい。

 

 仏様を讃える時、その名前の上に「南無」と付けて唱える。南無とは全てを任せるという意味だ。この身を仏様に預け、教えをそのままに受け入れ、今まで積み重ねてきたしがらみから抜け出す。それによって真理を体得して、正しい考えができるようになる。

 

 

 物事を見て考えるのはあくまで自分自身である。仏様は私達が物事を正しく理解できるようになるための手助けをしてくれる。仏様の力を借りて自分を正したら、仏様や仏教から自立する。それが悟りを開くということである。