わが思う心のうちは六の角 ただ円かれと祈るなりけり
【意味】
私の心には六つの角がある。この角を丸くしたいと祈るばかりだ。
【注釈】
・頂法寺…京都市中京区堂ノ前町にある天台系の寺院。通称は六角堂。いけばな発祥の地とされ、池坊の家元が住職を務める。
・御詠歌…詠歌は声を長く引き延ばして詩を詠唱すること。日本仏教においては、仏教の教えを和歌にして曲に乗せて唱えるものを御詠歌という。
【解説】
仏教では人間には「六根(ろっこん)」という六つの感覚があるとする。眼根(視覚)・耳根(聴覚)・鼻根(嗅覚)・舌根(味覚)・身根(触覚)・意根(知覚)の六つである。六根は人間の心を惑わせる煩悩を引き起こす。この六がこの和歌における六つの角である。その角が丸くなることを祈るとは、六根が心を乱すことをせず、心穏やかでありたいということだ。そして常に心穏やかであることが、悟りを開くことである。
六根は人間が生きるために必要なものである。それが煩悩を引き起こすのだから、私達は煩悩と共に生きていかねばならない。その上で煩悩をできるだけ起こさず、心を穏やかでいるにはどうするか。出家して六根が余計な刺激を受けない環境に身を置く、修行して煩悩に惑われないように心身を鍛える、座禅を組んで心を落ち着ける、念仏を唱えて阿弥陀様に全てを委ねる、様々な方法が実践され、成果を上げてきた。