風に順いて呼べば、声は疾きを加すに非ざるなり。而るに聞く者は彰かなり。
『荀子』
【意味】
風に乗せて呼ぶと、声が強くなったわけではないが、それを聞く者にはっきり聞こえる。
【解説】
お勤めではお経に節を付けて唱えることがある。この節回しを声明(しょうみょう)と言う。中国から仏教と共に伝わり、752(天平勝宝4)年の東大寺の大仏開眼法要にも声明を用いた記録が残っている。
声明以外にも鈴(りん)、木魚などの鳴り物を用いることで、お勤めに音楽の要素が取り入れられている。そのおかげで、僧侶にとっては大勢で声を揃えてお経を唱えやすくなり、より良いお勤めをすることができる。信徒にとっては心地良いお勤めを聞くことができる。唱え易くて聞き易いお勤めであれば、出て来た文言も心に残り易くなる。
どんなお勤めをしてもお経の意味は変わらないし、お経の内容を直ちに理解することにはならない。しかし、心地のよいお勤めを体験することで、お経への親しみを感じられるようになる。お経の言葉を覚えることで、その文面を思い返す機会が増える。親しみを持って思い返すことで、その内容を深く考えるようになる。良いお勤めは、仏教を考えるきっかけとして大きな役割を果たしている。
宗派によってお勤めのやり方は様々だが、それは仏教をどう身に付けて伝えるかの違いでもある。まずは色々聞いてみて、唱えてみて、より良いお勤めを求めて欲しい。お勤めが心に残れば、仏教が心に残る。心に残った仏教は、いつか役立つ時が来る。